アルメニア美人



コーカサス旅行記

~アルメニア美人~

気がついたらリダの家で一人の日本人旅行者と仲がよくなっていた。

僕は彼女とよく話し、一緒に行動することが多かった。南米でもヨーロッパでも、数少ない日本人旅行者との行動は、なぜか女性が多かったということを思い出した。

エチミアジンという街は歴史のある教会で有名だと旅行人に書いてあった。エレバンで特にやることもなくなってきた僕はこの街にいつかは行こういつかは行こうといいつつ、今まで結局行っていなかった。

僕は彼女とエチミアジンに行くことになり支度をした。それぞれのんびりダラダラと行動していたため結局出発は遅くなった。

エチミアジンはエレバンの東、キリキアバスターミナルからバスが出ていると情報ノートに書いてあった。僕はカタコトのロシア語と身振り手振りでリダおばあちゃんにキリキアバスターミナルの場所を聞くと、おばあちゃんは笑顔でマルシュルートカの番号を紙に書いてくれた。

エレバン中央駅からマルシュルートカにのり、15分くらいでキリキアバスターミナルに到着した。運よくすぐにエチミアジン行きのバスは見つかった。

彼女と一緒にベラベラと話をしているうちに、バスの運転手は「ここがエチミアジンだ」というような仕草をした。だが、バスを降りてもあたりには何もなかった。何もないわけでもない。一応ちゃんとした町にはなっているが、ただの村といった感じの小さい町だった。

晴天の中しばらく歩いていると教会が見えた。僕らはこの教会に入ってしばらくたたずみ、すぐに外に出た。どうやら旅行人に書いてある一番古くて大きい教会ではないようだった。

その辺の人に道を聞いたが、エレバンと同じようにほぼすべての人がアルメニア語とロシア語しかわからずまったくといっていいほど英語が通じなかった。僕はあるおじいさんに旅行人の写真を見せて、ここに行きたいというような仕草をした。アジアに入ってから英語が通じない国、英語が通じない人が多くなってきた。日本語教師要請講座で直説法(日本語のみで日本語を教える方法)のやり方を学んだことで僕はボディーランゲッジをしたり写真を見せたりなど、言語を使わずに意思を示すのが無駄にうまくなっていた。

彼は日本語で書かれている本に興味をもったらしく旅行人の写真を指差しながら「これがエチミアジンの教会だ。これがエレバンの街だ。これがアララット山だ。」というようなことを現地語で自慢するように話した。二人の日本人は笑顔でそれを聞いていた。

そこに二人のアルメニア人女性が通りかかった。彼女らのうちの一人は英語を話すことができたのでコミュニケーションは簡単に取れた。彼女はエレバンに住んでいて教会にお祈りに行く途中だった。僕らは彼女らと一緒に教会に行くことにした。

このアルメニア人女性は、、、ありえないほどの美人だった。顔立ちが整い、身長は170センチを超え、モデルのようなスタイルをしていた。彼女は警察で働いている普通のアルメニア人だったが、僕は一緒に写真をとるのすら緊張するほど、彼女は美人だった。

教会に行き、彼女はお祈りのために蝋燭をともした。そして僕らにお祈りの仕方を教えてくれた。彼女は僕の手をとって「こうやるのよ」と言う感じで十字を切った。僕はキリスト教のお祈りどころではなかった。何故か、何の意味もなく、ドキドキしてしまっていた。それは一緒にいた日本人女性も同じだった。僕らは「なんかすごいドキドキするね!」と言いながら爆笑していた。

二人の日本人は何故か異常に美人なアルメニア人にドキドキし、僕はこの美人アルメニア女性と2ショットで写真を撮った。端正な顔立ちをしたモデルのようなアルメニア美人のとなりに緊張しながらもデレデレした日本人が不気味な笑顔で意味不明なピースサインをしながら写っていた。

2人の日本人は美人アルメニア人と別れ、ドキドキの余韻に浸りながら教会を出ると、何かセレモニーのようなことをやっていた。子供たちが寄ってきて、若い女性から年配の女性までなにやら写真を取っているようだった。

ここにも日本では実際に見ることができないような、むしろ日本には存在しないのではないかと思えるほどの、遠い世界の、御伽の世界のお姫様のように美しい女性がいた。綺麗すぎて人とは思えなかった。こんな綺麗な人間が存在していいのかと思えた。こんな綺麗な人を生で見たことは人生で、ウクライナとアルメニアだけだった。

アルメニア人が大して化粧もしないでこんなに綺麗なのならば、お金をかけて、何時間も化粧をしている日本人はいったい何なのだろうか?巷で美しいといわれる日本人などアルメニア人に比べればなんてことはない。もはや僕はアルメニアという国に来てしまったことで日本のテレビなどで綺麗だといわれている人にも大して驚かなくなるのだろうななどと思えた。

そう考えると、日本人に対して、顔で結婚相手や恋人を選ぶなどという愚行は絶対にしたくないと思えた。どんなに綺麗な日本人も、美しいと呼ばれている日本人も、アルメニア人と比べればただの人としか思えなかった。

アルメニアはもともと美女が多いことで有名な国である。アルメニア入国当初はそんなに感じなかったが、この国に長くいればいるほどその爆発的な美しさに気がつく。グルジアも美人は多いし、グルジアもアルメニアもウクライナほど美人の率は高くないが、アルメニアの場合、美人の美人度合は世界一なのではないかと思えるほど、美人は爆発的に、異常に美人だった。

僕はその女性とも一緒に写真をとりまたデレデレとしていた。もはやどうでもいいと思い日本人女性と一緒にはしゃぎまわっていた。

アルメニア美人に囲まれるという下世話な理由で僕はアルメニアという国が大好きになった。アルメニア生活はどんどんと充実してきた。

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