キルギス/アラアルチャ



中央アジア旅行記

~日々生きる~

ナリンから北に数十キロ行くと、ソンキョルという湖がある。一緒にいた香港人にその写真を見せてもらい、僕はどうしてもここに行きたくなった。だが、ナリンのCBTではボッタクリ値を言われ、チャーターする車をシェアする人も現れなかったため、結局行くことはできなかった。

あきらめきれずに一度コチュコルまで行って探したが、それでもやはりシェアできる人がいなかった。

中央アジアは交通の便が悪いという話は本当だった。基本的に公共交通機関が網羅している路線が少なく、観光地は基本的にタクシーをチャーターするしかない。そしてシェアする人が見つからないときは信じられないほど高額になるため結局使えない。ナリンからのトゥルガルト峠の国境はパーミッションがかかるため、オシュからカシュガルに向かうことも考えたが、オシュに行くまでにまたシェアする人を見つけてタクシーと交渉して、、、となる。しかも話を聞くとどうやらオシュまでのタクシーはなく、カザルマン~ジャララバード~オシュといちいち乗換えをしなければならないようだった。

信じられないくらいに言葉が通じないことに加えて夏の暑さが激しいこと、そして公共交通機関がないため一人旅でシェアタクシーと交渉しなければならないという3つのハードさは中央アジアならではのものだった。

僕は結局ビシュケクに戻った。ビシュケクで一泊してウズベキスタンにいくか、カザフスタン経由で中国に入るかを考える時間がほしかった。

ビシュケクにはさくらゲストハウスという日本人宿があった。ここで情報を集めてから結論を出すのも悪くないと思い、一泊だけすることにした。だが、結局ここで日本人と仲良くなり、僕は次の日アラアルチャという山に行くことにした。ソンキョルが見れなかった分、キルギスの自然を近くで見てみたかった。

オシュバザールからマルシュルートカで30分で入り口に着く。ここで50ソムの入場料を払って見晴らしのいい場所へ10キロほど離れていると一緒にいた日本人の持っていた地球の歩き方に書いてあった。この10キロはヒッチハイクをするか歩くしかない。

偶然にも欧米人2人と一緒になり4人でヒッチハイクをした。結局100ソム払ったがそれはそんなにたいした金額ではなかった。

雪山が綺麗だった。欧米人はどうやらトレッキングをするらしくどんどんと上へ登っていった。日本人2人はなんとなく流される形で欧米人についていったが、いつのまにか彼らは先に行ってしまった。それでもそのままなんとなくの流れで僕は一緒にいた日本人と一緒にトレッキングをすることになった。

トレッキングなどするつもりもなかったのでビーチサンダルできた。ビーチサンダルでのトレッキングは体力的にもきつく、また、常に壊れたらどうしようと言う不安感と共に合った。かなりきつい山道をずっと登り続けた。

4時間ほど経過した。すでに夜6時をまわっていた。途中降りてきた欧米人に話を聞くとどうやらあと3時間ほどでベースキャンプのようなところに着くらしかった。以前に協力隊から聞いた話だと、ベースキャンプには食料が無い。

さすがに僕はベースキャンプにいくことはできないと考え、下山した。ここから見える景色はシンプルだが美しく、どこかマチュピチュのような壮大感があった。

また、雪山も今までに見たことが無いほどに綺麗だった。今までも色々な山を見てきたが、こんなに近くで見たのは初めてだった。アンデスもアルプスもヒマラヤも、僕は街のはずれの丘から見ただけだった。

アラアルチャ

アラアルチャ

結局下山したが帰りのマルシュルートカはもとよりタクシーすらなく、僕らは1日麓のホテルに泊まった。偶然にもゆかりさんの友達の協力隊員が仕事できていたため再開を果たし、談笑しながら楽しい夜を過ごした。



次の日に僕はビシュケクに戻り、ATMでお金をおろそうとした。だが、どこのATMも使えない。宿に戻りスカイプからクレジットカード会社に連絡をすると口座のお金が足りないから止めたと言う話だった。

ネットで自分の口座を見てみた。僕は三井住友銀行とシティバンクのこ2つの口座を持っているが、現在保有しているクレジットカードは三井住友銀行の口座に直結していた。その口座のお金が無くなるということはクレジットカードが使えなくなるのと同義語であった。

残りはユーロの現金とユーロのTCしかない。手持ちは充分にあるため、これで死ぬことは無いだろうがクレジットカードが使えないのは不安だった。それに、そんなにもお金を使っていたのかという思いもあった。

だが、僕はそんなに落胆しなかった。

お金が無いことは苦しいことだけれども、それだけ旅をがんばってきたということでもある。「今までよくやってきたな。」と自分に言った。初めはこの口座に100万円くらいあったのだろうか?もう金額も覚えていない。でも、それが今残金7000円。もう一つの口座にお金はあるだろうが、この残金は僕に帰国の現実を突きつけた。

それはそんなに嫌なことではなかった。むしろ僕は達成感すら感じた。よくここまで切り詰めて旅をしてきたな。もういい。ゆっくり休もう。と考えた。

親に連絡をしてシティバンクの口座からお金を引き出し、三井住友銀行に3万円入れた。これで数日後にはまたクレジットカードを使うことができる。また、幸いにもシティバンクの国際キャッシュカードは使えた。これで何の問題も無く旅は続けることができる。

だが、ウズベキスタンに行く気持ちはなくなった。この状態で旅を長く続けることへの不安感もあったし、あのお金に厳しい税関が面倒になったのもあった。

だが、それ以上に「また来ればいい」と思っていた。この旅行が人生最後の旅行と言うわけではない、これからどんな仕事をしてどんな風に生きていくかわからないけれど、また海外旅行をするチャンスはある。こんな余裕の無い長期旅行は二度としたくないけれど、ある程度余裕がある旅行が一生できないわけではない。もしそれができないのなら、それは僕の今後の人生が「旅行」というものに呼ばれなかっただけの話だろう。

僕はこの長期旅行を最後にしようと思っていた。そんな凝り固まっていた気持ちを取り払って、もっと自由にすればいいと思い始めていた、

ただ日々生きる。未来の不安や希望など考えずに今を生きる。
僕は色々なことがありながらも今日も旅の日々を生きていた。

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