中南米旅行記



〜旅のスタンス〜

コスタリカを出国し、僕は飛行機でボリビアのラパスへ向かった。

安い航空券は大概経由便となる。この便も例外ではなく、パナマシティ、サンタクルス経由ラパス行きとなっていた。ビジネスマンや短期旅行者と違い、今の僕にはお金はないが時間だけはある。その僕にとっては直行便だとか経由便だとか機内食が美味しいとかまずいとか、椅子のすわり心地がいいとか悪いとか、すべてどうでも良かった。気にする点は唯一、値段だけである。サービスなどどうでもいい、何時間かかっても目的地についてくれればそれでいい。ただ、ただ、如何に安く出来るかが問題だった。

パナマの空港に到着し、2時間ほど時間があったのでとりあえず座りながら南米のルーティングを考えた。最初の国はボリビア。首都はラパス。僕はこの国の首都に沢山の日本人がいて、如何にその日本人たちと僕との意見が合わないということをある人から嫌というほど聞かされていた。



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もう旅を始めて5ヶ月になる。最初にメキシコに到着したときは何もかも訳がわからず、現地人とどのくらい交流して日本人バックパッカーとどのくらい交流して、どういうところを観光して、、というような旅のスタンスが定まっていなかった。むしろ「自分の意思を持たず。主な目的を持たず。期間も定めず、行く国も決めない。あるとすればお金を節約することだけ。面白そうなことは全部やる。」という完全に流されるような旅のスタンスを持っていた。

が、キューバでお金を払いながらでもカーサやスペイン語学習のなかで現地人の生活に入り込み、メキシコで現地人と一緒に暮らしていく中で、僕はすべてにおいて流される旅のスタンスを辞めて、ある一つの明確なスタンスを持つようにした。

僕はこれから、現地人との交流、ホームステイをこの旅のメインにする。
多少観光旅行はするけれど、それはメインにはならない。

なぜこうするのかはわからない。ただ、ペンションアミーゴやカーサ吉田などの日本人宿に泊まっても、欧米人旅行者が集まる宿に泊まっても、何故か何の興味もわかない。興味がわかないから大して仲良くもならない、仲良くならないから面白くない。それよりもカルメン、ダマリス、アリス、インディラ、マリソル、モニカ、アミー、ラファエラ、ソフィア、マルビンと今まで出会ってきたラテンアメリカの現地人の方が、興味がわく。だからスペイン語を勉強することが楽しくなり、勉強したスペイン語という現地語で話すことが楽しくなり、さらにスペイン語を徐々にではあるが勉強しようと思うようになる。

むしろ、もはやスペイン語の勉強すらどうでもいい。僕の目的はスペイン語を勉強することから現地人とスペイン語で会話し、感情をシェアすることへと変わった。

同じように、現地に入り込んでいる日本人、旅人同士の交流も大してせずに、一人で現地を見ようとしている日本人、それは旅人であっても現地で仕事をして暮らしている人であっても興味がわく。僕はこういう格好いい日本人たちを見てきて、うらやましさと同時に好奇心が沸き、話をしたいと思った。それはこれからも続けていく。

Web上に上がっている僕の日記を見ることで僕は徐々にこのようなスタンスが明確になってきていることがよくわかった。日本人との交流はほとんど記述がないのに現地人との交流は大量に記述している。そして、現地で仕事をしている日本人や僕と同じような旅のスタンスを持っている数少ない日本人の旅人との記述もやたらと多い。これを見ることで僕はこのラテンアメリカにおいて、何がしたいのか?何を楽しいと思うのか?どういう旅人が好きでどういう旅人が嫌いなのか?が良くわかってきた。

旅をしながら多くのラテンアメリカを、そしてまだわからないが、ヨーロッパ、アジアの国々をみること、そして何よりもそこに生きている人たちと話し、感情をシェアしていくことをこの旅の一番の目的とする。



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コスタリカを出国する直前、僕はこのような旅のスタンスを持っているある人とチャットをした。彼女は僕と同じようなスタンスを持っているがために日本人バックパッカー、世界一周というネームバリューに流され、それを自慢げに話す人たちとの交流に疲れていた。ボリビアにはそういう種類の人たちは多いらしい。

僕は彼女の話を聞いてボリビアに行くのが嫌になった。
ボリビアの日本人宿に泊まり、日本人同士で絡み、日本語だけを話す。どことなくみんながいいと言っている場所に行き、自分の目で確かめようともしない。ネームバリューにこだわり、どこか自慢げで、どこか話が軽く、やけにうるさい。

深夜特急も、猿岩石も、旅行人ノートも、そして僕が今までインド・ネパールで、そしてキューバで、メキシコで知り合った多くの格好いい日本人たちも、僕と同じような旅のスタンスを取ってきた。決して日本人同士だけで交流し、日本人だけで旅をするようなスタンスは持っていない。

そしてそれは旅に限らない。僕と意見が合う人は常にどこか曲がっていて、どこかが頭がおかしくて、人に流されることなく、マイノリティーで、自分のスタンスを明確にしている人たちだ。旅など関係ない、大切なのはその精神である。

僕は自分と違うスタンスの日本人バックパッカーを最大限尊重する。が、僕は彼らとは明確に違う。天邪鬼と言われても、頭が固いと言われても、一人よがりと言われてもかまわない。今までは何となくこういう人たちとの交流も一応大切だと思ってきたが、今の僕の明確なスタンスにおいて、こういう日本人バックパッカーを僕は到底受け入れることは出来ない。

このスタンスを持つことでこういった種類の日本人バックパカーやWeb上に上がっている僕の日記を見た友達は敵になってしまうかもしれない。僕のような旅をしている人はマイノリティーだから意見が合う人が少なくて寂しさを感じてしまうかもしれない。

でも、それでいい。僕の友達の中に日記を見て僕のことを嫌いになる人はいないと確信している。そしてこんなことで寂しさを感じてしまうのなら、それを超える精神力を身につければいいだけの話である。

もし、僕の旅のスタンスを日本人バックパッカーと呼ばないのなら、旅人と呼ばないのなら、喜んでバックパッカー、そして旅人という肩書きを捨てよう。そんな肩書きなどどうでもいい。僕はバックパッカーじゃなくても、旅人じゃなくてもいい。ただのニートでいい。

いよいよ南米だ。日本にいた時に散々、南米に行きたい南米に行きたいと言っていたにも関わらず、結局南米に入るまでに5ヶ月かかった。



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ようやくここまで来れたことを感謝し、そしてこのスタンスで旅することを決め、僕はボリビア行きの飛行機に乗った。

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