中米旅行記/ニカラグア・レオン



〜レオン〜

ホンジュラスとニカラグアの国境には日本国旗が描かれていた。日本の援助で作られたもののようだ。

ニカラグア国境

ニカラグアの国境で入国税12ドルを支払い、ようやく中米4カ国目、ニカラグアに到着した。僕は何故か分からないけれどニカラグアだけはどうしても行きたかった。別に何があるわけでもない、現地人の友達もいない、治安が悪いと言う噂が飛び交っている。一つもいい所はなさそうな国だが、地球の歩き方の写真が中米のどこの国よりも綺麗だった。それだけの理由でこの国に行くことを楽しみにしていた。

国境からニカラグアの観光地の一つ、レオンに向かった。バスターミナルの付近はゴミがあちこちに散らばっていて、野良犬も多い。中米はどこの国も同じような感じだが、ここはさらに汚かった。しかも暑い。暑さと汚さで疲れ果てていたが、このまま止まっているわけにも行かない。

ミニバンで近くの街に行き、バスに乗り換えた。ミニバンには日本語で(有)〜〜、と書かれていた。アジアでも中東でも見たことがある。日本の廃車がそのまま発展途上国に流れている。

ニカラグア国境

レオンは意外にも近かった。バスに2時間ほど乗っていたらすぐに到着した。バスターミナルからリクシャーに乗って宿を目指した。中南米に限ったことではないが、新しい街に着いてまずやることは宿の確保である。旅をしている人の最大の弱点であり最大の長所は家がないことである。その日に寝る場所だけは確実に、そして出来る限り安く、確保しなければならない。全く見ず知らずの国に来て、治安も悪いと言われている場所で、宿を確保できていないことの心細さは他に比べようがない。

リクシャーは優しく、宿を一緒に探してくれてスムーズに到着できた。僕は地球の歩き方に載っていたオスタルクリニカという一番安い宿に泊まることにした。本当はホステルブッカーズを使ってちゃんと一番安いところを探すべきなのだろうが、1円でも安くというお金に対してそこまでこだわりをみせることが段々と嫌になってきていた。

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宿の暗い部屋で僕はネットを開いた。そこにはYの想いが書かれていた。

「あなたのことが好き。でも、あなたとはまだ付き合いたくない。」「私の今まで男運は最悪。いつも不幸な形で別れて、別れた後、私を憎んでる。もしあなたがそうなったら耐えられない。だからこそ賭けをしたい。それは時間をかけてお互いを見ていきたいということ。それまで私は一人でいると、一人ではなく独り。・・・」

僕は彼女の言っていることを理解した。むしろ彼女の妥協を許さない姿勢を尊敬し、自分を好いてくれたことに感謝した。自分が彼氏であるとか、つきあいたいとか、そういうことはどうでもよかった。ただ、彼女にこれ以上傷ついてほしくなかった。だからこそ、むしろ独りでいてほしかった。強くなってほしかった。信念を貫いてほしかった。

心の底から僕は彼女の幸せだけを願った。他人に対してこういう風に思ったのは生まれて初めてだった。これは偽善ではなかった。

また、僕は彼女のことを考えながら自分の事も同じように考えていた。僕は旅中に彼女の恋人になるのは嫌だった。恋人がいることで、自分の旅に集中できなくなるのが嫌だった。それだけは絶対に避けなければならないことだった。

こうして、僕は彼女ではない、だが彼女のような、よくわからない存在を手に入れた。

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オスタルクリニカは宿としては最悪だった。水が出ないのはまだ我慢できる。部屋が汚いのも我慢できる。が、中庭にはゴミが異常と言えるほど散乱していた。散乱と言うよりも中庭自体がゴミ箱のようになっていた。部屋には電源が二つなく、扇風機をつけているとパソコンを開けない。パソコンを開いているときは扇風機がつけられず異常に暑い。ラウンジのような所にいったが誰もいなく、電気も満足につかない。

何よりも嫌だったのは従業員が金金うるさく、犬にかまれそうになったらこちらが悪いようなことを言われたことだった。狂犬病の予防接種を打っていない状態で犬にかまれることが致命傷になるということを現地人は分かっていなかった。

僕は次の日に宿を移動した。カーサイバーナという宿はオスタルクリニカに反比例して最高の宿だった。値段は200円くらい高いけれど、まずスタッフが優しい、そして水飲み放題、シャワーの水は出なかったけれど、ちゃんと言えば水を用意してくれる。そしてハンモックでゆっくり出来る。

宿を確保しようやく落ち着いた。次にやることは両替である。ニカラグアでは米ドルもある程度使えたが、コルドバというニカラグアの通貨に両替した方がレートはいいようだった。両替するとなんとなくこの国の物価が分かってきた。恐らくメキシコより若干安くなっている。

ここまでやってようやく落ち着いて街を歩ける。レオンの街は静かだった。サンサルバドルに比べて落ち着いている。市場は活気があったが、そこまで物売りもいなく、一歩街を離れると田舎になる。

レオンに限らずニカラグアは教会やカテドラルなどのコロニアル建築が有名な観光地である。街自体はそんなに大きくないにもかかわらず、レオンの市内には10個ほどの教会がある。

僕は2日間街を歩き続け、一つ一つの教会を見続けた。そして暑かったのでスイカを食べ続けた。レオンの教会はメキシコやエルサルバドルに比べて古く、趣がある感じがした。実際に歴史があるのかは分からないけれどこの趣のある感じはどちらかというとキューバに似ている。

旅を始めてから数多くの教会やカテドラルを見てきている。段々と飽きてきているのかもしれない。飽きて飽きて嫌になるほど見続けることが楽しみな気がした。そしてニカラグアは今までいったどこの国よりも色んな人に話しかけられた。普通に広場で座っていると普通に話しかけられる。話しかけてくる人はどの人も純粋で人懐っこくて素敵だった。

ニカラグア国境

平和だった。教会以外に何にもない小さな街だけど、人は素朴で純粋で、全体的に静かで観光客もほとんどいなかった。こんな所で強盗が出て命を落とすと言うことは考えにくい。僕の中米に対するイメージは真逆のものに変わっていた。

次はグラナダ、レオンと同じように、ニカラグアきっての大観光地である。

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