〜片道航空券の罠〜実家に帰り家族と過ごした後、東京に戻ってきた。急に気温が下がり始めたことで、風邪を引き始めた。実家に帰ってから十日ほど咳と鼻水が止まらない。 東京に戻って、友達の家に泊まりながらも咳は止まらなかった。風邪が治らない。 そんな何日も何日も止まらなかった咳が一瞬にしてとまった。 「このチケットじゃ入国できませんよ」
・・・こいつ何いってんの?
心の中で毒づきながら話を聞いた。 どうやら航空会社の説明では、このチケットはロサンゼルス経由メキシコシティ行き、ロサンゼルスの滞在時間は5時間ほどである。問題はメキシコではなく、経由地のアメリカであった。たとえトランジットであってもアメリカは往復の航空券がなければ原則入国できない。メキシコ行きの片道航空券を買っているのでロサンゼルスからメキシコ行きのチケットは当然持っているわけだが、カナダ・メキシコ・キューバは第三国とみなさないとのことだった。たった5時間のトランジットでこの始末ある。 航空会社の人と話し、チケットの販売元と話し、メキシコ大使館にも問い合わせ、今後の道筋を考えた。販売元に電話しても、今のチケットを往復に切り替えることは不可能で、もう今のチケットを払い戻しして、新しいチケットを購入するかダミーの復路のチケットを購入するしかないという結論に達した。新しいチケットを購入しようにも明日のチケットは今、ほとんど売っていなかった。当日見送りにきてくれる人たちに日程変わりましたというのは申し訳ない。結局ダミーのチケットを買うことになった。メキシコから日本に買えるチケットをネットで探したがなかなか見つからない。 最終的にHISに頼むことなった。HISの担当者に正直に「アメリカ経由のメキシコの片道チケットしかないのでダミーのチケットを購入したい」と言うことを告げた。本来こういうことは言わない方がいいのだろうけど、正直に言ったほうが後々面倒にならないと思って全部言うことにした。 HISの人は事情を理解してくれ、明日の出発までにダミーのチケットが必要であり、即日でチケットを発行してくれ、返金手続きのやり方を丁寧に教えてくれた。 これで入国したら返金手続きを取れば結局キャンセル料1万5千円でダミーのチケットを購入したことになる。 ただ、アメリカからメキシコ・キューバ・カナダ以外に抜けるチケットを持っていない。大丈夫なのだろうか?本当にこのダミーでトランジットできるのだろうか?というかトランジットでなぜこんなに面倒くさいことをしなければならないのか? 今思えば、ロサンゼルス往復を買ってサンディエゴからティファナに渡ってそこから国内線でメキシコシティに行けばすべて問題なかったのではないだろうか?そうすればアメリカも無事入国でき、ティファナでアメリカを完全に出国し、陸路でメキシコに入国できる。ティファナからは国内線なのでビザはおろかパスポートもいらない。ロサンゼルス往復も考えたが、バスでメキシコシティまで行くのが面倒だという理由で辞めた。ティファナから国内線と言う発想はなかった。と、過去のことを言っても何も始まらない。 ダミーチケットがあれば恐らく搭乗拒否はないと思うけど、もし搭乗拒否されたら今のチケットキャンセル1万5千円+ダミーチケット1万5千円の3万円+次の日のロサンゼルス往復を買えばいいだけである。搭乗拒否された段階で大阪から上海に船で行き、ユーラシア大陸横断して南米からメキシコに行くと言う突拍子もない案も出たが、これはやりたくない。 でも、この状況をてんぱりながらも楽しんでいた。結果よりも過程が大事。もう、旅は始まっている。 TOP NEXT |