イギリス野宿(空港泊)





~マクドナルドと空港=家~

朝7時におきたせいか、僕はずっとバスの中で寝ていた。気がついたら午後14時になっていて、そこはもうリヴァプールだった。リヴァプールがどういう街なのかもよくわからない。確かビートルズと縁が深い街だった気がする。いずれにしてもベルファストに向かうまでの中継地点でしかなかった。僕はここから船に乗りアイルランド島にわたる。

バスを降り、宿を探した。ロンドンにいたときにホステルクラブというホステルワールドやホステルブッカーズのまがい物のようなサイトで宿を予約していた。イギリスは金曜日・土曜日になると一気に宿の値段が跳ね上がる。通常9ポンドから10ポンドの宿が金曜日土曜日は15ポンド~20ポンドくらいになる。もはや物理的に払うことが出来ないレベルの値段だった。僕は必死に安い宿を探し金曜日にもかかわらず10ポンドの宿を見つけた。

マクドナルドでパソコンを開き、宿の住所をノートに写した。いつのまにか、ロンドンにいたときから一ポンドのチーズバーガーを買うのが日課になっていた。ここでも当然のようにチーズバーガーを一つ頼み、ちょっとだけゆっくりとしていた。

ここのマクドナルドではWIFIが入らなかったため地図を開くことは出来なかったが、どうせ近くにあるのだろうと思い、住所のみで人に聞きながら行くことにした。

だが、誰に聞いてもこの住所は知らないといった。5~6人に聞き、ようやく21番のバスでCounty Roadというところに行けるという情報を聞いた。市内の中心部から2ポンド払いバスに乗る。このバス代がすでに250円以上するということが辛かった。さらに運の悪いことに、バスの運転手はそこに着くには30分ほどかかるといったのにもかかわらず、僕が15分ほどで「まだか?」と聞きにいくと「もう過ぎたから戻るバスに乗れ」と言い出した。相当にイライラして文句を言ったが、どうしようもなく、僕は戻るバスに乗った。また2ポンドかかった。

今度はバスの運転手の横に常に張り付き、County Roadで降ろしてもらった。ここからまた住所をもとに場所を尋ねたが、人によって言うことが違うため、結局見つからなかった。僕は一度ネットを使って地図を開こうと思い、ネットが繋がる場所を探し、結局マクドナルドに行った。また1ポンドのチーズバーガーを買った。無駄に「ワンチーズバーガープリーズ」の発音だけはよくなっていった。

ネットでもう一度地図を確認し、地図を自分のノートに書きマクドナルドの店員に場所を聞いた。完璧に道を把握し、今度こそたどり着けると確信した。

・・・14時にリバプールに着いたはずなのに気がついたら19時をまわっていた。荷物を持って何時間も歩き回ることで肩が痛くなってきた。だが、この痛みも慣れている自分に笑いを覚えた。そしてまた「何をやっているのだろう?」という自分自身への疑問を押し殺しながら宿に向かった。

だが、196番地という場所には何もなかった。古びた廃墟のようなアパートだけがある。ドアも開かない。周りの人たちに聞き込みをしてもそんな宿はこの辺には存在しないといわれた。僕はだまされたのか?もう一度マクドナルドに戻ってネットを開き、宿の電話番号を調べた。その電話番号に電話しても出ない・・・

これは、完全にだまされた。すでに僕は3ポンド前金で払っている。

イラつきは頂点に達したが、まずは今日どこに泊まるかを考えなければいけなかった。金曜日はどこも予約は一杯であり、探しに探してようやく見つけた宿だった。今から探してもおそらく高い宿しかない。

警察で事情を話して警察署にとめてもらうか、空港に泊まるかを悩んだが、警察に事情を話すのが面倒になったため、また、警察署がどこにあるかわからなかったため、最終手段として空港に泊まることにした。

CountyRoadから市内に戻ろうとするがバスが来ない。雨が降ってきた。自分が雨でぬれるのはかまわないがパソコンが壊れるのは困る。パソコンがなくなったらこの旅はほぼ不可能になる。雨宿りもかねて来るか来ないかもわからないバスをひたすら待つ。

30分後、バスはやってきた。市内に戻り、空港に行くバスを探す。雨が段々と強くなる。パソコンの入っている鞄を必死に守りながら、歩き回り、人に聞き、500番のバスが空港にいくということが分かったが、空港行きのバスはすでに終わっているらしかった。霧のような雨が降り続いている。僕は雨宿りをかねて駅に行き、空港に行く方法を駅員に聞くと列車でparkwayというところまで行きそこから空港行きのバスが出ているといわれ、僕は列車に乗った。チケットを買っていなかったが何も言われなかった。いまいちシステムがよくわからない。

parkway駅につき、バス停しばらく待つとLiverpoolairportと書かれたバスがやってきた。僕は「きたぁーーー!」と心の中で叫んだ。また2ポンド払い、空港に向かった。いつの間にか10ポンドくらいは使っていた。10ポンドが1300円というレートは頭の中から離れなかった。

・・・空港は暖かかった。コーヒーショップのソファでゆっくりと眠ることが出来た。

ぐっすりと寝て、またバスで空港から市内に向かった。なぜか今度は3ポンドだった。この日も宿はなかったが、次の日の宿は予約していた。荷物をこの宿に置かせてもらってまた空港で眠ろうと考えた。

四苦八苦しながら今度は宿を見つけ、荷物を置かせてもらいようやく観光ができた。ただ、リバプールもロンドンに負けないくらい寒かった。寒い中、港を歩いているとビートルズ博物館のようなところがあった。Across the Universe, The Lond and winding road, Let it be, For you blue、、、僕の中で完璧すぎるチョイスのビートルズの曲が流れていた。僕はここのお土産屋で流れてくるビートルズの曲を聴きながらゆっくりとしていた。

気がついたら日が暮れていた。緯度が高いためか、日が暮れるのが早い。

日が暮れて寒くなり、人もまばらになる中、歩き回っても心がさびしくなるだけなので、僕はまたマクドナルドに行った。マクドナルドの店員は僕に対して何故かものすごい優しく、パソコンの電源のある席を教えてくれ、席を離れるときは「盗まれないように気をつけてね」というようなことを言った。僕はここでネットを使いBBCの英語講座とよくわからないサイトで数時間英語を勉強した。

マクドナルドにこんなにも救われるとは思いもよらなかった。今までの人生でマクドナルドのことを散々批判してきたが、そのマクドナルドにこんなにも温かくされ、こんなにも助けてもらえるとは思わなかった。意味不明なほど物価の高いイギリスで安く食事が出き、ネットが繋がり、いつまでもいることが出来る。宿のない僕にとってここはもはや「家」だった。ありがとうマクドナルド。

そして前日と同じように空港に戻る。空港はネットは繋がらないが、電源があり、なぜかコーヒーショップに飲みかけの紅茶が置いてあり、かなり快適な場所となっていた。何よりもここは温かい。ここもまた宿のない僕にとって「家」となってくれた。

ここリバプールのジョンレノン空港で僕はビートルズを聴き、また頭の中には常にイマジンが流れていた。いやな事ばかりのイギリスで初めてピースアンドラブを感じた。

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