ドイツの病院に戻ったとき僕は懐かしさを感じた。2週間ぶりの病院だった。

検査を受け治験の謝礼を受け取った。500ユーロ札が何枚かある。現金でもらうとは予想していなかったので、僕は盗まれないためにトラベラーズチェックを買うか、日本に送金するか、何かしらでこのお金を守らなければならないと感じていた。

だが、いずれにしても長い長い治験は完璧に終わった。

僕はノイスからアムステルダム行きの列車の中で治験でずっと一緒だったくろきくんとビールで乾杯した。

・・・オランダは他のヨーロッパの国々と違う、むしろ世界で唯一の特別な国とも言える。ここにはある特別なものがある。一応世界中の色々な国にこれはあるが、オランダだけはなんともいえない特別さがある。

僕は彼と一緒にその特別なものを見に行いって頭も決めようと決めていた。

アムステルダムの駅に着き僕らは予約した宿に向かった。アムステルダムはベネチアのような運河の街だと到着してから知った。彼はアムステルダムの中央駅が東京駅のモデルになったと教えてくれた。いずれにしてもオランダもまた一つの国として、ヨーロッパ建築は独特だった。イギリスでもフランスでもドイツでも、もちろんロシアでもなかった。

江戸時代、鎖国していた徳川幕府と唯一貿易をしていたヨーロッパの国と言うこともあり、日本と一番深い関係にあったヨーロッパの国ともいえる。彼は長崎のハウステンボスはアムステルダムの景色そのものだと言った。

宿にチェックインをして、2012年優勝作品のタバコのようなものを吸いに行こうとした。レッドライトディストリクトは飾り窓と呼ばれる女性がほぼ裸で街行く人々を誘惑するドアで有名な、世界有数の風俗外。綺麗な教会と運河に囲まれて、観光客向けのレストランと、裸の女とそしてオランダにしかないカフェが立ち並ぶ。コーヒーを売っているお店と言う表現もいいかもしれない。

この地区にグリーンハウスというカフェがあった。オランダにしかないこの種のカフェはクラブのような雰囲気で、そしてインドでかいだことのある葉っぱの焦げたようなにおいが充満していた。

ここではみんなタバコのような巻物を吸っていた。欧米人の若者がそれぞれグループで、あるいは一人で、わいわいと、あるいは黙々とタバコを吸っている。アルコール類は厳禁でジュースやコーヒーは置いてある。

こんなショップがアムステルダムには至る所にあった。ここはある意味では奇跡の街なのかもしれないと思い始めた。

2012年優勝作品は売り切れていた。僕らはここで2003年優勝作品のタバコとコーヒー牛乳を買い、一服しながら牛乳を飲んだ。

なぜか笑いが止まらなくなった。なぜかはわからない。牛乳の美味しさは際立った。僕は舌の感覚が鋭くなった感覚を覚えた。

僕はくろきくんと会話をしながらずっとヘラヘラ笑っていた。こんなに楽しい会話は普通ではありえなかった。お酒を飲めば、あるいはこんな風になるのかもしれない。

街を歩いた。教会や運河がくっきりと見える。レッドライトディストリクトの飾り窓のネオンが異常に輝いて見える。広場が広い。頭がふらふらする。

僕は若干頭がふわふわしながら宿に戻った。

パソコンを開いて音楽を聴いた。音楽がありえないほどに立体的に聞こえる。ギターの音が、ベースの音が、ドラムの音が、そして機械的に入れている音が、作曲者の意図がわかるほどに、音がくっきりと聞こえる。僕は同じような経験をしたことはあったがここまで明確に音が聞こえたのは初めてだった。

いまわのきよしろうの音楽を聴いたあたりでおなかが減ってきた。スーパーで買った食べ物が美味しい。何でこんなにおいしいのか意味がわからない。

僕は2日間同じようにダラダラとしながらまったく同じことを繰り返した。

幸せなのか不幸せなのかまったくわからないアムステルダムのトラベルが始まっていた。

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