スペイン語留学inキューバ



〜戦後の日本〜

カルメン婦人のスペイン語レッスンを受けることで僕は以前より格段にスペイン語が話せるようになっていた。

インターネットが使えないこともあり、毎日毎日、のんびりと散歩したり昼寝したり、海岸に行ったりしながら過ごし、午後になりカルメン婦人とのレッスンが始まる。レッスンを終えて夕食を食べ、ダマリスのもう一つの家に行き、家族と一緒にテレビを見る。という日が続いた。



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トリニダーという何にもない街に長く滞在することで僕は少しだけキューバに慣れてきていた。トリニダーは大航海時代のヨーロッパのような街並みの中に、黒人・ラテンの文化が混じり、街には独特の音楽が流れていた。これはハバナも同じであった。このエキゾチックさは実際にこの国に来て感じないと理解できない。入国当初はキューバという国に戸惑っていたため気づかなかったが、僕はようやく徐々にこの国を感じることが出来てきていた。

キューバ人はメキシコ人とは全く違う。メキシコ人よりも粗野で乱暴で心が純粋である。メキシコはもっと洗練されている。メキシコに来たときはメキシコのクレイジーさに驚いていたが、メキシコが普通の国だと思えてしまうくらいキューバのインパクトは強い。社会主義国に見られるような閉鎖的な面はキューバにはない。みんなオープンマインドで気持ちがストレートで感情が表に出やすく分かりやすい。

トリニダーの街ではみんなが友達のような感覚で付き合っているようだった。隣近所の付き合いが深く、いつも夜遅くまで近所の人同士で話をしている。そしてこの国では家のドアが常にオープン状態のため、家の中も丸見えであった。大体どの家族も夜は常にテレビを見ている。とにかく家族・友達・隣近所の付き合いが深い。今でも、東南アジアの発展途上国、ミャンマー、ラオス、タイの田舎、カンボジア、はこんな感じである。戦後の日本もこんな感じだったのだろうか?今の日本では見られない純粋さ、素朴さを感じる。

外国人である僕が歩いていると「チーノチーノ!」と声をかけられる。商売目的の人間もいるが単純に外国人に対しての好奇心で話しかけてくる人も多い。このオープンマインドに対して僕は必死に応えていた。多くの日本人がそうであるように、僕は知らない人と話を続けるのがそんなに得意ではない。一度仲良くなればずっと話をし続けられるが、はじめて会う人にはどうしても壁を作ってしまう。こういう性格を意識しながらも向こうのストレートな気持ちに負けないように出来るだけ色んな人と話をするようにしていた。

ただ、毎日毎日インターネットが使えない状態で、なおかつ日本語を話せない日々が続くと寂しくなってくる。僕は恐らくインターネットがなければ長期の旅は出来ない人間なのだろう。ネットがあれば世界中どこにいてもあまり変わらない。自分の意思一つでどこにいる誰とでも簡単に連絡が取れる。だから、自分の思うようにどこの国にでも飛んでいける。ただ、ネットがあることで気持ちが今いるその国に入りきれないという矛盾を抱えてしまう。だから常にネットをする時間で葛藤をする。

その意味において、キューバはインターネットが使えないという点一つとっても、僕にとって最高に厳しくもあり、最高に面白くもあった。この厳しさに耐えながら、のんびりとスペイン語をストイックに勉強すること、そしてこの国を感じるということを毎日毎日楽しんでいた。

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