キューバ旅行記、スペイン語留学記



〜偽者じゃねぇ〜

オランダ人のカップルが去ると、カーサのリフォームがまた始まった。どうやら今度は台所をリフォームするようだ。客用の部屋もエアコンを移動するらしい。

毎日毎日朝8時から工事が始まる。ドンドンという音がうるさく、何をするにも集中できない。そして食事をする場所も段々とクオリティーが低くなっていった。初めは綺麗なテラスで食べていたのに、それが汚い台所へと変わり、最終的に彼女の旦那の家にいちいち行かなければならなくなった。

これって・・・騙されている??

騙されていると思ってもチケットの日程は決まっているため、メキシコには帰れない。ハバナに帰ることも考えたけれど、スペイン語の授業はまだ続いている。今の段階で中途半端にスペイン語の授業を終わらせたくない。

カーサを変えることも考えた。よく探せば安いカーサはあるはずだ。でも、変えたくなかった。ダマリスとの関係が気まずくなる。

そして何よりも、もう動くこと自体が面倒くさくなっていた。

ここでの生活は完全にルーティン化している。大体同じような時間に食事をし、同じような時間にスペイン語のレッスンを受け、同じような時間にテレビを見て、同じような時間に寝る。もはや旅行でもなんでもない。キューバの田舎町で生活している。

まだ時間はある。納得するまでこの生活を続けていたい。

・・と言いながらも、段々とこの生活が嫌になってきている自分がいることをを感じていた。この工事をしている家で、コンクリートと埃の匂いが充満しながら、得体の知れない虫に刺されながら、ハエや蚊が飛んでいて、どこの家のトイレも吐きそうになるくらい汚く、日本人もいなく、ネットも使えず、それでいて物価がそんなに安くないこの環境が嫌になってきていた。

今まで思わないようにしていた想いが急に出てきた。
「メキシコ帰りたい。」

「メキシコ楽しかったな。アリス元気かな?インディラ元気かな?本当にまた会えるのかな?メキシコ良かったな。カリブ海綺麗だったな。生活レベル高いのにキューバより物価安かったな、みんなハイソだったな、ネット基本的にタダだったな、キューバみたいに世紀末じゃなかったな、キューバ人みたいにでかい声で話さないし、キューバ人みたいに人の嫌なことずけずけ言わないし、キューバ人みたいに金金言わないし、キューバ人みたいに変なスペイン語話さないよな、、、、そもそも何でキューバ来たんだろう?何でビザ延長したんだろう?何で街中に馬が走っているんだろう?なんで50年位前の車やトラクターが走っているんだろう?なんでそのトラクターで豚を運んでいるんだろう?」

どんどんとキューバの悪い面ばかり見えてくる。メキシコが素晴らしい国に見えてくる。
「メキシコ帰りたいメキシコ帰りたいメキシコ帰りたい。」

想いが強くなればなるほどネガティブになるけれど、よく考えたら、この最低な環境こそ最高の環境だと言うことに気がついた。

僕は、こういうめちゃくちゃな経験をしてボロボロになるために日本でお金を貯めていた。
日本にいたとき、南米を旅をして留学して現地人と現地語でしゃべって、現地人と生活して、現地のリアルな生活やリアルな社会を見て聞いて感じて、意味の分からない生活をしたいってずっと思っていた。今、その夢は叶っている。

そう思うと笑えてきた。そして思った。「偽者じゃねぇ。」

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