チェ・ゲバラ、サンタクララにて



〜エルネスト・チェ・ゲバラ〜

ガタガタの道路を3時間ほど走り、サンタクララに到着した。サンタクララのバスターミナルはトリニダーに比べて近代化していた。久しぶりに文明に帰ってきた気がした。

バスターミナルの出口付近に日本人のバックパッカーがいた。彼と話をし、部屋をシェアすることにした。アンナが紹介してくれたカーサの主人の男性はバスの出口を少し出たところにおり、彼のカーサに日本人バックパッカーと二人で泊まった。

サンタクララという街は地球の歩き方に一切掲載がない。地図上に載っているだけである。実際に見て周っても広場があり、教会があり、ハバナのようにエネルギッシュでもなければトリニダーのように歴史を感じるような場所でもない。ほとんどの場所はただの住宅街だった。

ただ、僕は地球の歩き方の地図に一行だけ「チェ・ゲバラ霊廟」と書いてあるのが気になっていた。一切の説明はないがあのチェ・ゲバラの墓があるのではないかと期待してこの何もない街にやってきた。



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エルネストチェ・ゲバラ
・・フィデルカストロと共にバチスタ政権と戦ったキューバの革命家である。

彼はアルゼンチンの比較的裕福な家庭に生まれた。大学で医学を学んでいた時に親友と共にラテンアメリカ各地をバイクで旅をすることでラテンアメリカの社会の矛盾を感じ、その後の革命家としての人生が始まる。
帰国後に医者の資格を得てから、今度は一人で旅に出た。彼はベネズエラの病院で働く予定だったがグアテマラからメキシコに入る。そこでフィデルカストロと出会い、キューバの独裁政権との戦いに賛同しキューバの反攻作戦に参加。2年ほどのゲリラ戦争の中で、軍医として、指揮官として能力を発揮し、革命後はキューバの市民権を得る。
革命後のキューバでは国立銀行総裁・工業大臣の要職に着き、アメリカの経済封鎖に会いながらも独自の経済理論を遂行していった。
その後、そのほかのラテンアメリカやアフリカの未開放の地域の武装闘争に参加し、革命を試みるが、南米ボリビアにて現地人との不和、農民の離反、戦略の失敗などもあり、政府軍に捕らえられ銃殺された。
(地球の歩き方より一部抜粋)



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僕はなんとなく彼が好きだった。どういうところが好きと言われても分からない。ただ、なんとなく社会の矛盾に立ち向かっていく彼の姿がかっこよかった。社会の矛盾に対して考えていくことの難しさ、そしてそれを行動に移すことの大変さ。自分にはできないことだからこそ憧れが強かった。

そして彼は権力に固執しなかった。革命が起きた社会主義が成功しているか失敗しているかは権力者が腐敗しているかによる。チェ・ゲバラはキューバの革命を成功させたあと、家族を捨ててコンゴ・ボリビアに向う。キューバで安住できたはず、キューバで革命を成功させた英雄としてキューバの権力に守られながらいい暮らしもできたはず。でも彼はそれをしなかった。世界にはまだまだたくさんの矛盾がある。それを開放するために彼は戦い続けた。

もちろん日本で革命が起きて欲しいとは思わない。日本は世界の国から見て医療、経済、社会保障において素晴らしい国だと思う。でも、何かがおかしい。何かが矛盾している。何か閉鎖的で、経済が優先され、みんなが同じレールを走っている。そしてレールに沿わない人を、考え方が違う人を異端児扱いする。普通に生きている人はそれに気づいていないか気づいていても知らない振りをしている。この矛盾に対して自分は何もできないかもしれない。でも、小さなことでもなにかできるかもしれない。僕の周りには日本でも海外でも小さなことでも何か行動している人が多い。そんな自分の境遇を考えてみると、エルネスト・チェ・ゲバラを好きにならずにはいられなかった。

サンタクララは地球の歩き方に掲載がないので地図がない。カーサの家主に言って地図を見せてもらい、とりあえず歩いた。街中から歩いて10分くらいだった。モニュメントは思ったより大きかった。大きい広場があり、その真正面にチェ・ゲバラの銅像が建っている。彼がキューバにおいて如何に偉大な人物として扱われているかがわかる。所々に彼の「Hasta Vitoria siemple(常に勝利に向かって)」というメッセージが書かれていて、近くには彼のミュージアムもあった。ミュージアムに入ると彼の写真や実際に使われた銃などが飾ってあった。写真撮影をすると注意され、入り口の荷物預かり所に預けなければならなかった。ミュージアムは無料だがモニュメントに比べて小さく30分もかからない内に全部見終えてしまった。

チェ・ゲバラの銅像

僕は旅を続ける。まだ安定した生活を捨てて旅を続ける。いつ旅をやめるかは分からない。お金が尽きるまで自分なりに頑張ってみる。そして旅が終わった後にこの世界のどこかで誰かのために何かをしながら生きていく。

僕は小さいことでも自分にできることがあることを確信していた。



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チェ・ゲバラを堪能した後は特に何もしなかった。サンタクララでは特に何もすることがない。ただ、夜になると、広場には人が集まり、イベントのようなものをやっていた。クラブがあり、若者が集まっている。ヨーロッパのような感じがする。キューバとは思えない華やかさだった。

バスターミナルでハバナ行きのチケットを買おうとしたらプライベートタクシーがほぼ同じ値段だった。タクシーの予約をしてハバナへ向かう。
ハバナ・・懐かしい。何週間ぶりになるかわからない。2,3日小旅行をするつもりがいつのまにか1ヶ月以上経過してしまっている。

そしてハバナの次は・・メキシコだ。

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