メキシコ旅行記/テワカン



〜アミー号〜

メキシコシティからバスで3時間ほど南に行ったところにメキシコの主な観光地の一つ、プエブラという街がある。モンテレイから帰ってきた後、僕は南米に向かうために南へ南へと進んでいた。

プエブラの街は教会・カテドラルが多く立てられていてメキシコのコロニアル都市そのものだった。僕はシングルの宿を探し、まるで深夜特急の主人公のような気分で街を散策し、ボロボロでありながらもアンティークな雰囲気を醸し出している現地人しかいない宿に数日滞在した。

プエブラは常に曇っていて時々雨が降っていた。街の散策もやりずらく、地球の歩き方に掲載されている写真と実際の風景は全く違うものになっていたが、僕は観光地の写真を取り、ガイドブックに書いてあるところを見て周るような旅には一切興味をなくしていた為、このリアルな風景は逆に心地よく感じられた。



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そしてプエブラからさらにバスで2時間ほど行ったところに、テワカンという街がある。この旅4人目の現地人の友達が住んでいる街。プエブラの街に数日間滞在した後にテワカンに向かった。

アミー。この旅においてメキシコでは最後になる僕の友達の名前である。彼女とは約1年前にライブモカで知り合った。知り合った当初はほとんど会話もなく、会いにいこうか迷っていたけれど、なぜか最近になって急激に仲良くなっていった。

メキシコ滞在中、フェイスブック上で僕らは様々な会話をした。彼女は初めネット上にしか存在していない得体の知れない日本人を怖がっていた様子であったが、あるとき、彼女は家族の話をしはじめた。僕はずっと話を聞いていた。彼女の家は大家族であったが、彼女は常に一人だった。お母さんを亡くし、お父さんが自分よりも年下の女性と再婚するということに傷つき、悲しんでいた。僕はそれに対して何を言ったのかは覚えていないが、それ以来彼女は僕を信頼してくれるようになっていた。

彼女とはネット上でケンカしたこともあった。普通に会話をしていて会話の最後に「me quejo contigo(あなたに不満がある)」と言われ「眠いからもう寝よう」といわれた。まるで僕が彼女が寝るのを引きとめたかのように言われたので若干イラついて「どういうこと?」と聞き返しそのままチャット上で言い合いになったことがあった。後になって「me quejo de ti」は(あなたに不満がある)と訳すが「Me quejo contigo」は眠いことにたいしての不満であり、僕に「眠い」という不満を言っただけであった。僕は恥ずかしくなり謝ったが、それからさらに仲良くなっていった。

彼女は初め、プエブラに住んでいると僕に言っていた。得体の知れない日本人が訪れるのが怖かったのか、ただ単にテワカンのある「プエブラ州」と言いたかったのかはわからない。ある日、彼女は「実は私はプエブラではなくプエブラ州テワカンというところに住んでいる」と言った。僕は「もし旅の途中で会えるならテワカンに行くよ」という話をしていた。

テワカンという街は球の歩き方に一切掲載がない。地図上に「Tehuacan」と出ているだけであった。ネットで調べてもまったくと言っていいほど情報がない。ここに安宿はあるのか?ここで何をするのか??多少不安になったが、それが逆に楽しみになった。



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バスターミナルに着き、彼女に電話をした。彼女はバスターミナルまで迎えに着てくれ、ハグとベシードをした。この旅4人目の、そしてメキシコ最後の、Webからリアルに変わった友達である。

僕は彼女と一緒に安宿を探した。事前に彼女は僕のために安宿を探してくれていたが、若干値段が高かったため、新しい宿を探すことにした。30分ほど探し回りシングルで1000円くらいの宿を見つけた。彼女にありがとうと言い、二人で部屋で休んでいた。

すると、彼女は突然僕の手を握り始めた。僕は混乱した。出会って30分でいきなり???このままにしておくと、彼女は暴走しかねない。この雰囲気はやばい。
・・・これ以上二人きりでいるのは危険だと察知し、訳が分からなくなりながらも冷静に対処した。

すると彼女は「ごめんなさい。私たちはアミーゴだね。」と言い、冷静になった。恐らく一瞬の気の迷いだったのだろうと思った。彼女と今までチャットをしてきて彼女のことが大好きであるがそれはあくまで友達としてだった。

僕は彼女を部屋に入れ、そういう気にさせてしまったことを反省し、謝った。彼女は人間ができていて、「こちらこそごめんなさい」と言った。「ごめんなさい」という言葉をメキシコ人から聞いたのはほぼ初めてだった。

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