メキシコ旅行記/ライブモカで知り合った友達



〜アリスインワンダーランド〜

メキシコの薬は効いた。

翌日になり、体調は多少よくなった。やっぱり体が大きい人用に作っているせいか、薬自体が強いのかもしれない。もう一日休むか次の目的地に向かうかを考えたが、一瞬にして次の目的地ケレタロに行くことに決めた。

昨日よりよくなったとはいえ、まだ体調が悪い。この状況下で歩き回ってバスターミナルを探すのはきつかった。タクシーを使えば一瞬で到着できるということは分かっている。値段も安い。日本円にして500円以下である。それでもタクシーは出来るだけ使いたくなかった。タクシーに乗ってバスに乗って目的地に到着することは簡単だ。お金さえ出せば誰にでも出来る。そういう結果は重要ではない。結果を求めるなら初めから旅などしない。それよりも自分からどこともわからないバスターミナルを探し、人に道を聞いて、カタコトのスペイン語を話すと言う過程を楽しみたかった。お金を節約したいという思い以上に、こういう一つ一つの行為そのものを楽しむことが旅において重要な位置を占める。

地球の歩き方にもバスターミナルは地図上にしか書いていない。とりあえず宿のスタッフに道を聞いた。バスと地下鉄でいけるが、地下鉄では3回乗換えをしないといけない、、、というようなことを言っている気がした。

とりあえず彼が言ったとおりに道を歩いてみた。風邪が治っていない状態で重さ15キロくらいある荷物を背負ってなおかつよくわからない道を歩くのはきつかった。そして道が途中で分からなくなり、何人もの人に聞いた。一人ひとり言っていることは違っていた。バスで行けるという人、地下鉄の〜〜駅の近くと言う人、地下鉄の○○駅の近くという人、3番線に乗り換えれば行けるという人、2番線に乗り換えればいけるという人、様々だった。

言うことが一人ひとり違うのはインドと一緒だ。なぜなのかは分からない。親切心なのか、自分のスペイン語の理解力が薄いからか、、、分からないが、みんな親切に、丁寧に、親身になって教えてくれたのだけはわかった。

バスターミナルに着いたときは2時間が経過していた。バスターミナルでチケットを取り、バスに乗った。メキシコは物価は全体的に安いが、なぜか移動費だけ高い。数時間の移動に200ペソ(1300円)位する。

メキシコのケレタロの街

バスに乗り3時間、、、、目的地ケレタロに着いた。



ケレタロはそんなに有名な観光地ではない。地球の歩き方にも小さく掲載されているだけだ。グァナファトやグァダハラの方が観光地化されて旅行者も多い。写真を見る限りたいした観光スポットでもなさそう。しかも街自体も小さくすぐに見回り終わって飽きてしまいそうな街である。

それでもこの街には来たかった。
この街には友達がいる。



名前はアリスという。本名かあだ名かもわからない。スペイン語を勉強していたときに、ライブモカで知り合った。段々と仲良くなり何度か話していくうちにフェイスブックとスカイプを使って普通の友達のように話すようになっていった。

日本にいるときに、彼女とはスペイン語で会話していた。グーグル翻訳があれば何も分からなくてもなんとなく会話は出来る。出来るだけネイティブと話したかった。外国語はとりあえずネイティブと話すことから始まる。これが日本ではなかなか難しい。そしてお金がかかる。

だが、このサイトはそんな常識をすべて打ち破っていた。このサイトはすべて無料。そしてスペイン語のネイティブと会話が出来る。

「メキシコに行くからその時は会える?」
「いいよ!いつでもおいで!ケレタロっていう所に私は住んでいるわ。私がケレタロを案内してあげる!」
「ありがとう」

・・・日本にいた時にこんな会話を何回も何回もしていた。そして今はただの仮想状態であるWeb上の友達をリアルの友達にするということを旅の一つの目的にしていた。



事前にフェイスブックで連絡は取っていたので、ケレタロに到着してすぐに公衆電話から電話をした。テレカが上手く使えない。周りの人に助けてもらいながら何とか電話しようとするが、スペイン語が分からない。なんとなくボディランゲージで言っていることを理解しようとし、こちらもつたないスペイン語で意思を伝えようと頑張る。英語が通じない国で一人旅をするには、電話をするにしても両替をするにしても交通機関に乗るにしてもすべてにおいてありとあらゆるコミュニケーションを必要とする。

メキシコに着いたときからうすうす感づいていたが、この国の人は誰も英語を話さない。話せないのかわざと話さないのかは分からないが、外国人であってもごく普通にスペイン語を話す。インドではこちらがちょっとでもヒンディー語を話すとインド人は喜んでくれたが、メキシコは違う。こちらがカタコトのスペイン語を話しても何も喜ばない。ごく普通にスペイン語でまくし立てるように話す。メキシコに着てから、日本語はおろか、英語すらほとんど聞いていないし話す機会もない。

少しでもスペイン語を学んでおいてよかった。スペイン語を学んでいなかったらもっと大変だっただろうし、もっとお金がかかっていただろうし、こんなに楽しくなかっただろう。

彼女が電話に出た。が、彼女も当たり前のようにスペイン語を話す。当然ほとんど何を言っているかわからない。電話だとボディランゲージもないのでさらに理解するのが難しい。自分の持っている全集中力を使って彼女の話を聞く。

どうやらバスステーションに迎えに来てくれるらしい。20分くらいで着くというようなことを言っているような気がする。違うかもしれない。よくわからない。とりあえず電話を切って待つ。

20分以上待っても来ない。もう一度電話をする。
「もうすぐ行くから」と言っているような気がする。

さらに20分ほど待つが、来ない。

そしてあることに気づいた。・・・やばい。入り口が2つある。

チケットカウンターで「彼女に電話してあそこの入り口に来てくれ」と言ってくれと伝えたが理解してもらえない。むしろ「入り口は4つあるよ」とさらに嫌な情報を教えてくれた。

もう一度彼女に電話した。今バスステーションに着いたらしい、電話口から見えるレストランの名前を連呼しここに来てくれということを伝える。

よくよく考えたら怪しさ満天の状況である。突然訳の分からない日本人が自分に会いに、自分の住んでいる街にやってくるのである。

でも、会いたかった。これは一昔前のペンパルに相当するものだろうか?ペンパルはペンパルでしかない。いくらフェイスブックやスカイプが進化して写真が見れたり通話が出来るようになっても、会ったことがない外国人は結局は仮想の友達でしかない。

どうしてもこの仮想を現実にしたかった。まだ相手が来るどうかの確信を持てない。
本当に来るのか?本当に来るのか?

・・・不安に思っていると、一人の若い女性がやってきた。

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