ブエノスアイレスからモンテビデオのフェリー



〜友達の友達は友達〜

ブラジルビザの件で一通り凹んだ後、僕は5月広場へ向かっていた。カサロサーダと呼ばれるピンクの建物を背にして広場のベンチに座った。

5分ほど待っていると日本人の男の人が現れた。鈴木君。メキシコのモンテレイで会ったマリソルの友達だった。マリソルから以前に彼を紹介され、メールで連絡を取り合っているうちにいつの間にかブエノスアイレスで会おうかという話をするようになった。

日本人の男二人はマックで高いコーヒーを飲みながら広場の噴水の見えるベンチで話をした。彼はブエノスアイレスで音楽をやっているようだった。彼は僕よりもスペイン語を勉強していた。ちょっと悔しいと思ったがあくまでも語学は楽しんでやるものだと、そしてこの旅の目的はスペイン語を勉強することではないということを思い返した。だが、これも言い訳なのかもしれないとも思った。

数時間ほど噴水のところで語り合った後に、ワインを買って宿で飲み始めた。僕のいた宿は別に部外者が入ってきてもそんなに問題ではないようだった。

お互いの事情を話し、スペイン語のことを話し、ラテンアメリカのことを話した。僕は次の日には何を話したか忘れてしまったが、時間をかけて話をしたことだけは覚えていた。

彼はウルグアイに行きたがっていた。僕も小旅行程度にウルグアイのコロニアという街に行こうと思っていた。コロニアという街はブエノスアイレスから船でラプラタ川を渡り、2時間ほどで着く。

だが、彼はモンテビデオに知り合いの妹の家族が住んでいるのでそこに行きませんか?と誘ってくれた。宿代がタダになる上にウルグアイでも現地人と関われると言うのは僕にとって朗報だった。そしてモンテビデオにも、当然のようにブラジル領事館はある。

こうして、まったく予定になかったウルグアイに行き、ブラジルビザを取ることになった。とりあえずパラグアイやイグアスに戻るよりはマシだった。

彼の友達に家族の住所を聞くため、そして彼のやっているバンドの練習のため、僕らはブエノスアイレス郊外にあるバンド仲間の所へ行った。ブエノスアイレスのセントロからコレクティーボで1時間半ほどの所にあった。彼はここで知り合いの家にホームステイをしているようだった。友達の家も近くにある。

友達の家につき、彼はバンド仲間を紹介してくれた。彼らは曲を作りながら練習しているようだった。青春時代のような感じで曲を作り、モカコニャックを飲み、明るかった。彼らの曲は僕にはなじみのないものだったけれど、僕はそれなりに曲を聴いてリラックスしていた。

モンテビデオの家族を紹介してくれるといったウルグアイ人の彼は酔っ払っていた。どうしようもないくらいに酔っ払っていた。でも、彼は「アミーゴに言葉はいらない」というようなことを熱く語った。この言葉は何故か僕の心に響いた。

練習が終わり、みんなでピザを食べた。

鈴木君が彼に家族の住所を聞こうとしたところ、彼はまた熱く語りだした。「俺はお前らを信用している、俺の家ならいつ来てもいい。でも、俺にとって妹は何よりも大切な存在だ。俺の妹に何かあったら俺はそいつを殺す。だから、お前らを信用していないわけじゃない。信用できるのは分かっている。でも、今日会ったばかりだ、ヒロ(鈴木君)もまだ2ヶ月しか付き合いがない。だから分かってくれ。」

僕は彼の気持ちは分かった。確かに見ず知らずの日本人が突然家族の所に行くのは心配だろう。大丈夫大丈夫と言い、とりあえず彼の妹の家には行かないことになった。



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翌日、鈴木君はチケットを買ってきてくれた。夜遅くの出発だった。それまで暇だったのでブエノスアイレスを観光していた。そんなに見るものがないブエノスアイレスで唯一すごいと思ったレコレータ墓地と言う所だった。ロマンシングサガやFFのボスに出てきそうなモニュメントが沢山あって怖いようなエキゾチックなような意味不明な場所だった。

レコレータ墓地

レコレータ墓地

夜になり、港へ向かった。港で出国手続きと入国手続きを同時にやり、すぐに船に乗り込んだ。フェリーはなんのエキゾチックさもない普通の船だった。そして自由な船旅となるはずが、真っ暗で川は何も見えない。風情も何もなかった。

2時間ほどでウルグアイに到着した。

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