チリホームステイ/日本語を勉強するチリ人



〜生意気なチキティータ〜

「初めまして、タマラです コテちゃんの友達^^」
「こんにちは、コテとはどこで知り合ったの?」
「ピグでw」
「え?アメーバピグってチリにあるの?」
「みんな知ってるよーw チリで アニメとか V系とか」
「あーそうなんだ。ところでタマラさん大学生?」
「うんうん、高校生ww」
「はぁ!?高校生!?」

・・これがタマラとの最初の会話だった。僕はライブモカで知り合ったコテという友達からタマラを紹介された。コテは日本人が好きなチリ人に知り合いが沢山いるからといって僕のフェイスブックをタマラに教えていた。タマラは突然フェイスブックで僕に日本語で話しかけてきた。

僕はタマラにもいつものように家に泊めてとお願いした。いつのまにか、図々しさと言う言葉はなくなっていた。彼女は「狭いアパートだけどいい?」と突然現れた意味不明な日本人の意味不明な言動を快く受け止め、僕は彼女の家にホームステイすることになった。



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サンチャゴのセントロにあるモネダ宮殿で僕らは待ち合わせをした。雨が降っていた。雨の中バックパックを持って歩くのは嫌だったが、どうしようもなかった。

モネダ宮殿に着いたが誰もいなかったので近くの公衆電話から彼女に電話をした。すると彼女は、「今、真ん中のチリの旗のところにいるよ」と日本語で言った。もう一度向かうとチリ国旗の真下に二人の女子高生がいた。こうしてこの旅で何人目になるかわからない、会ったこともない友達との出会いを果たした。

タマラは日本語を流暢に話した。今まで旅をしてきて、ここまで日本語を話せる人にあったことはほとんどない、しかも若干17歳である。話を聞くと彼女はジャニーズとビジュアル系のファンでそのために日本語を勉強していると言うことだった。

彼女も友達も「チリには沢山日本語勉強している人がいるよ」と言った。アニメ以外にも日本のコンテンツ、しかもジャニーズがこんな日本のほぼ裏側に浸透していると言うことに、今更ながら驚いた。僕は、ここ数年ほとんどテレビを見ていないため、こういう若い人が好む芸能人をほとんど知らなかった。むしろ彼女の方が日本の芸能事情に詳しかった。

僕は彼女らが勉強している日本語学校に一緒に行き、何故か授業を見学させてもらった。タマラのクラスの同僚たちは、僕を見ると目を輝かせながら頑張って日本語で話しかけてきてくれた。そして彼らは授業中も熱心だった。日本人の先生は楽しそうに、そして生徒に楽しんでもらうように授業をしていた。僕はなんだか嬉しくなった。

彼女は生意気だった。女子高生のなかでもかなり若者感満載でノリノリで色々なことを流暢な日本語で話しかけてきた。僕よりも若者言葉を知っているかもしれない。そして時々、「お前、マジありえねーよ」とか「おいコラ!」というような人をむかつかせるようなことを言った。

そして、彼女は僕のことを「チキティート」と僕を呼んだ。スペイン語で少年のことをチーコ、それをかわいらしく表現したものをチキート、さらにかわいらしく表現したものをチキティートという。日本語に訳すならば「お子様」とでも表現すればいいのだろうか?いずれにしても僕は不愉快になりながらもこんなことで怒るのも大人気ないと思いながらスルーしていたが、いつの間にか僕も彼女を「チキティータ」と呼んで子供のケンカのようなことをするようになっていた。

タマラの家はセントロからバスで1時間ほどの所にあるアパートだった。僕はスペイン語でお父さんとお母さんに挨拶し、数日間泊めてもらえることにお礼を言った。お父さんもお母さんも外国人と話すのは初めてらしく、緊張している様子だった。相手が緊張しているときはこちらからほぐしにいかなければならない。僕は今までホームステイしてきた家族よりもさらに自分から話しかけ、率先して家事を手伝った。タマラが通訳してくれたので意思疎通はいつもよりも簡単だった。

アルゼンチンで自分より年上の人とヒモ生活した次は、チリで女子高生の家にホームステイというハチャメチャなことになっているが、僕はもうどうにでもなれと思い始めていた。段々と、そして完璧に僕の感覚はおかしくなっていた。

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