派遣社員の賃金不払い



〜争い(後編)〜

イライラしているとき、焦っているときは頭の中と行動が矛盾する。この仕事でのイライラは、家での問題に発展した。家に帰ってきたときに機嫌が悪い。それが周りにも伝わっている。家の人たちは優しいからそれを言わない。言わないけれど伝わってくる。それに自己嫌悪する。それに自己嫌悪する自分の面倒くささにさらに自己嫌悪する。

ある日、家で些細なことで怒った。ちょっとした誰かの冗談に本気で怒った。大声を出したわけではないけれど相手は明らかに自分が怒っているのを分かっていた。数日後「ごめんなさい」というメールが来た。こちらこそ「ごめんなさい」である。あんな些細なことで怒ってしまう自分が本気で本気で嫌いになった。そして彼女に心の底から謝り、また朝まで一緒に話しながら仲良くなっていった。

数日後、そのことについてYと話し合った。Yは冷静だった。冷静さが怖かった。心底反省した。

・「○○ちゃん(家の友達の名前)も確かに悪いところはあると思うけど、あんなことで怒るっていうのは信じられない。あれ○○ちゃんじゃなかったら許してくれなかったと思うよ。」
・「ごめん、ちょっとイライラしてたから」
・「そうやってネガティブな感情をすぐに出す人間ってすごい弱いと思う」
・「わかってる。なんか自分の心が弱いから。。。」
・「弱い弱いっていってながら、なんで人の弱さを認識できないの?」
・「やっぱり心をぶらさないっていうか物事を冷静に見れる人間って強いよね、その人のことを想って起こるっていうのはとても大切だけどただの自分のイライラを人に見せるってどうなんだろうね?」
・「はい・・」

こういうことを経験して、自分自身を成長させていきたいし、いい人間になりたい。何がいい人間かわからないけど、そしてそこに傾倒しすぎて頭の中がグルグルしすぎてよくわからないことになってしまうこともあるし、自分の性格の悪さに愕然とすることもある。成長できない自分にいらだつこともある。でも、それは旅とかそんなんじゃなくて自分の人生において、30歳になっても40歳になっても、考え続けたい。そこには特効薬などない。旅に出たから変わるものでもない。 毎日毎日誠実に誠実に生きていくことでほんのすこしずつ、目に見えないくらいの遅さで、それでも確実に不断の努力で積み上げていくものである。

その日の夜・・本気で反省した。
「お願いだから変わってください。もっと大人になってください。いい加減、本当に切実に真剣に変わってください。」と自分にお願いした。






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数日後、残業代は払われた。やっと払われた。うれしいけれど、なんでこんなに待たせたのだろうと疑問に思う。本当に疲れる。悩みすぎて疲れた。

いつもお金のことばかり考えている自分に嫌気が差してくる。そこまでして旅をしたいのかと自分に問いかけると不安になる。自分が正しいのかわからなくなる。
世の中は不条理なもの。そしてその世の中の不条理を受け入れ続けることは大切。確かに自分の信念は貫かないといけない。そのために捨てなければいけないこともある。人から嫌われることもある。でも、本当にその信念は正しいのか?自分の独りよがりの考え方になっていないか?それを常に自分に問いかけなければならない。

そして今みたいに、金のために嫌々と仕事をして楽な方へ楽な方へといくとこういう風に常に不満が出てくるということを知った。旅から帰ってきてどんな仕事をするかは分からないけれど、お金のためだけじゃなく、楽な方へ逃げるわけでもなく、かといって社畜のように仕事にすべてをささげて鬱になるわけでもなく、バランスのいい使命感を持った仕事、自分の得意分野が活かせる仕事を必ず見つけ出す。仕事は人生にとって大部分の時間を占める。ここに使命感を持ちやりがいを感じれないと人生を棒に振る気がする。かならず見つけ出す。




ある日社長からメールが来た。

「何か、SVに私の悪口を言っているようだけど、まぁ、お前は若いから何もいうつもりはないが、就業時間に言うのはやめてくれな!もしこれ以降も続くのならまた話をしよう!!」 「あとこの前、話があるっていってたけど何?日程を決めよう!私は6月*日が無理だからそれ以外だったらいいぞ!もし何も連絡しないのならそれはそれとして片付ける!」

といった内容のメールだった。

原文は「愚方」とか「貴台」とか「下命」とかよくわからない言葉が使われている。この社長はいつも何がいいたいのかよく分からない。

どうやら話をしようということらしい。

残業代について話すつもりだったが残業代が支払われた今、特に話すことはなかった。あまりにイライラしすぎてて文句を言いたくなった。

派遣先の会議室で話す予定だったが、自分がひょんなことから30分だけ残業になった、そうすると社長は池尻大橋の飲み屋にいるというメモを残して去っていった。

池尻大橋の246沿いの飲み屋で二人で話した。結局文句を言うことなく世間話をするだけで終わってしまった。社長はもう70歳近い。自分の若いころの話をし始めた。思いのほか面白かった。なんか就業とか労働条件とか段々ともうどうでもよくなった。ひょっとしたらこの社長はいい人なのかもしれないとすら思い始めた。

そして・・やっぱりこの話になる。
「いつ辞めるんだ?」
「9月です」
「9月のいつだ?」
「9月の半ばです。あとは有給休暇全部使わせてください」
「しょうがねぇな、じゃあ、有終の美を飾れ」

有給休暇を辞めるときに使うのは当たり前のことだと思っていたのでなんでこんなえらそうに言われなければいけないのかわからなかったが、とにかくこうして9月に会社を辞めることが確定した。いままで延長延長しすぎてもはや辞めるという言葉になんの信憑性もなくなっていたが、今度こそ今度こそ今度こそ本気でやめる。社長に言ったのだから間違いない。9月退職!そして10月に出発!

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